狭野方は実にならずとも花のみに 咲きて見えこそ恋の慰に(10・1928)
さのかたは実らずとも花だ けさは咲いた姿を見せてほしいものです。恋に苦しむ心の慰めに。
狭野方(さのかた):あけび、つる性の落葉樹で雌雄同株でしかも雌雄異花。実が熟すると口が開いたようになりこれから「開け実」となり変化し「あけび」となった。
茎の部分が生薬として使用され薬名は木通。実の種を包むゼリー状のところに甘みがある。種からは食用油を採取することもできるが最近ではあまり聞かない。
果実の皮は大人が好む苦味があり、茎、実、種とも有効利用できる果物である。
アケビ科の実は古来から朝廷への献上物とされたいたら朝廷は開いた実を嫌い熟していないものかアケビ科ムベ属のムベ(郁子)を望んだ。
アケビの茎には利尿作用と抗炎症作用がある、中国ではアケビとは別の種属である関木通(ウマノスズクサ属)を木通と称して販売しているところもあるそうですがこれには腎臓障害を起こすアリストロキア酸が含まれ注意が必要である。
ところで上の歌の返歌は
狭野方は実になりにしを今わらに春雨降りて花咲かめやも(10・1929)
今さら春雨が降って花が咲くことなどありましょうか。
である。
紫色の果皮は美しい女性に似合うのかもしれない着こなせばしっとりとした雰囲気が醸し出されるかも
アケビのつるで編んだ籠に花を摘み、お茶をいただき季節を楽しむのも和むものです。