2010年9月1日水曜日

不意の災難


梅柳過ぐらく惜しみ 佐保の内に 遊びしことを 宮もとどろに(6・949)
うめやなぎすぐらくをしみ さほのうち あそびしことを みやもとどろに

梅や柳の盛りが過ぎてしまうのが惜しくて、ちょっと近くの佐保で遊んでいたことが、宮もとどろくばかりに大騒ぎになってしまった

 この歌は宮中で謹慎処分を受けた舎人(とねり、下級役人)が鬱憤を晴らすために詠んだもの、事の次第は天皇の警護役の舎人たちが春日野に遊びに行き、打毬(だきゅう)を楽しんでいたところ雨が降り出しそのうえ雷が鳴り出した、警護の者は咄嗟の際には天皇の身の回りの世話をするのであるから雨風のため大変な状況になり誰もいないことを知った責任者は驚き慌てたものと思う。

 この舎人は貴族の子弟であるからこのように御所を抜け出したのであろうが、本来の下級役人であれば天皇の近侍として使えることはない、行儀見習いの現在でいえばインターシップのようなもので反省の様子はみられない
 何事もなければ赤信号みんなで渡れば怖くない、気分転換のため遊ぶのであれば交代で出かければよかったものを全員で遊ぼうとしたところに若者の愚かさがある運が悪いという言葉はこのようなときのことを言うのであろう
 佐保の内とは御所から遠くないところであるのにということである
 世間では大山鳴動してネズミ一匹ということもある、雨が降り雷が鳴り響き御所内の御殿が水浸しになっただけであれば、天皇も怒りはしたものの外向きのため謹慎処分ですませたものと思われる
 この当時は雷が鳴ってもまだ「くわばらくわばら」と呪文をとなえていなかったことは明確である。
 今日からしばらくは永田町や報道関係者は佐保の内ならかまわないだろうと飲みに出かける方はいないと思うが少しぐらいならと飲んでいると思わぬ情報に出あうかも