2010年8月9日月曜日

百日紅


家にありし櫃に鏁刺し蔵めてし 恋の奴がつかみかかりて(16・3816穂積親王)
家にある櫃に鍵をかけて閉じ込めておいた 恋の奴がつかみかかってきたぞ

 天武天皇の第5皇子である穂積親王は但馬皇女等と浮名を流した万葉のプレーボーイ、彼は宴会で宴たけなわとなるとこの歌を詠ったとのこと。酔ったときの決まり文句であったようである。

 櫃は穂積親王の恋のパンドラの箱で奴は中に閉じ込められた様々な欲望たちのこと

 現在でも音楽番組でたまに「恋の奴隷」などという歌詞が流れるがこれは使ってはならない用語ですよね、万葉時代には公奴婢(くぬぎ)と私奴婢(しぬひ)があり奴は男性、婢は女性をあらわすそうである。

 但馬皇女が穂積親王にあてた歌がある
 後(おく)れ居て恋ひつつあらずば 追ひ及(し)かむ 道の隈(くま)みに標(しめ)結(ゆ)へ我が背(せ)
 (2・115但馬皇女)
 人言を繁み言痛み己が世に未だ渡らぬ朝川渡る(8・1513但馬皇女)
 人言はまこと言痛くなりぬとも そこに障らむ我にあらなくに(12・2886)

 噂話で傷つくのは身分に関係がないことは万葉の時代も同じ何百年経っても男女の仲を中傷したり噂話にするのは同じです、言いかえればこの手のお話について進歩がないと言うことです、噂話をしている当人は罪のない話をしているつもりでも噂をされている人は二度と恋をするものかと傷つく場合もある。

 穂積親王に縁のある崇福寺跡付近を散策すると濃い紅色の百日紅が満開でした夏の花であるこの樹がサルスベリと言われるわけは樹皮のコルク状の部分が剥がれてつるつるになり猿も登れないだろうということかららしいですが比叡山のお猿さんは滑ることなくこの樹を登っていました。
 京阪電鉄で終点は坂本、門前町でお寺さんがあれば供えるお菓子がある、比叡のお猿さんやお鉄餅あまりよそではお目にかからないがお鉄餅は求肥でつぶ餡を包みはったいこをまぶしてある、子どものころこのような上等なお菓子をいただいたことがなかったが、はったいこだけは夏になるとおやつによくだされた、はったいこに砂糖を混ぜ冷たい麦茶で練って食べたが素朴なおやつである。